こんなことでお悩みの方におすすめ
- ビットコインに関して、昔マウントゴックス事件というのがあったらしいので、知っておきたい。
- 仮想通貨界隈で「ゴックスする」という言葉を聞いたが、意味が分からない。
- ビットコインで取引所選びに失敗するとどうなるか、知りたい。
この記事を読むと3分で分かること
- マウントゴックス事件とは何か、その真相
- マウントゴックス事件からの教訓と対策
- 正しい仮想通貨取引所選びの方法
2023年現在からするとだいぶ前ですが、2017年から2018年にかけて、ビットコイン価格が10倍に高騰したことがあります。
しかしながら、当時、日本人でこの価格高騰にうまく乗れた人と言うのは意外に少なかったと言われています。
仮想通貨の高騰に乗れなかった日本人が多い理由として、一般的には以下のようなことが言われています。
- そもそも日本語訳である「仮想通貨」という名前自体がすぐに消えてしまいそうでダメだったのでは?
- 日本には新しいものを受け入れにくい風土があるのでは?


しかしながら、当サイト「博士の仮想通貨積立」として最大の原因だと思っているのは、2014年に発覚した「マウントゴックス事件」です。
この事件があったために、「仮想通貨なんて、やっぱり怪しくて危ないものだ」とほとんどの日本人が思ってしまい、その結果として仮想通貨バブルは一部の「冒険者」だけが恩恵を受けたものになってしまいました。
このマウントゴックス事件の教訓は、仮想通貨投資に役立ちます。
それどころか、マウントゴックス事件の教訓を知らないまま仮想通貨に投資すると、第二、第三のマウントゴックス事件に巻き込まれる可能性があるとさえ言えます。

というわけで今回は、ビットコインの歴史上で最大の事件ともいわれる「マウントゴックス事件」についてお話したいと思います。
この記事はどんな人が書いているの?
- 2017年に仮想通貨投資を開始し、30代で金融資産6,000万円を達成
- Coincheck(コインチェック)およびbitFlyer(ビットフライヤー)で、毎月20万円ずつ仮想通貨を積立中
- 東京大学経済学部卒。2023年現在、仮想通貨投資歴6年、暗号資産CFD歴1年、株式投資およびFX歴15年以上
そもそもマウントゴックス社とは?
マウントゴックス事件の前に、マウントゴックス社についての基本情報を簡単にご紹介します。
マウントゴックス社の設立は2009年。拠点は東京の渋谷にありました。
マウントゴックスという名前は「Magic The Gathering Online eXchange」という名前の頭文字をとったものです。


2010年にはビットコイン取引の事業に転換し、2014年の破綻当時には世界最大の取引量を誇るビットコイン取引所となっていました。
現在では考えられないことですが、なんと、2013年4月には世界のビットコイン取引量の70%をマウントゴックス社だけで占めていたのです。


マウントゴックス事件の概要
現在、日本最大の取引所であるビットフライヤーでさえ及びもつかない「全ビットコイン取引の7割」のシェアを誇ったマウントゴックス社。
しかし、2014年に大事件が起こります。
2014年の2月に、ハッキングによって85万BTCが消失したと発表されたのです。(85万BTCは、当時の時価で470億円前後、現在の時価ではなんと2.5兆円以上)
事件の内容は当時の日本経済新聞が詳細に伝えています。
インターネット上の仮想通貨ビットコインの取引所「マウントゴックス」を運営するMTGOX(東京・渋谷)が28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、同日受理されたと発表した。債務が資産を上回る債務超過に陥っていた。
顧客が保有する75万ビットコインのほか、購入用の預かり金も最大28億円程度消失していたことが判明した。
MTGOXのマルク・カルプレス社長は28日夕の記者会見で「ビットコインがなくなってしまい、本当に申し訳ない」と謝罪した。消失したのは顧客分75万ビットコインと自社保有分10万ビットコイン。金額にして「114億円程度」としているが、他の取引所の直近の取引価格(1ビットコイン=550ドル前後)で計算すると、470億円前後になる。
当時のマウントゴックス社の社長であるマルク・カルプレス氏は、記者会見で「サイバー攻撃」による消失だと主張しました。
実際に、警察にも被害届や刑事告発を行ったようです。
さらに、マウントゴックス社としての民事再生法も申請しました。(要は"破産した"ということです)
民事再生法の申請に至った理由は、「ビットコインと預かり金の消失により、負債が急増したため」としています。

【コラム】「ゴックスする」とは?
マウントゴックス事件を受け、仮想通貨界隈では「ゴックスする」という言葉が生まれました。
「ゴックスする」とは、原因は何にせよ、仮想通貨がなくなることを意味します。
ハッキングで仮想通貨が無くなった場合、間違ったビットコインアドレスに送付して無くなった場合など、どんな場合にも使えます。
マウントゴックス事件の真相とは
ここまでで述べたことが全てであれば、「マウントゴックス社のセキュリティが弱かったのだろう」「ビットコインって、やっぱり危ないな」となってしまう話だったかもしれません。
正確なことを言えば、この事件については2023年現在でも完全に真相が明らかになっているわけではありません。
しかしながら、マウントゴックス事件の真相に近づくための手掛かりが次々に出てきているのは確かです。
最初に疑いが強くなったのは、社長のマルク・カルプレス氏による横領です。


実は、ビットコイン関連のデータを操作できたのはカルプレス氏だけだったこと、自分名義の口座データを不正操作してビットコイン残高を増やしていたことが分かったため、マウントゴックス事件は社長自身による犯行だということが濃厚になってきました。
実際に、マルク・カルプレス氏は業務上横領および私電磁的記録不正作出・同供用罪で起訴されました。一貫して無罪を主張し、2019年3月15日に「業務上横領では」無罪判決となりました。
一方、私電磁的記録不正作出・同供用罪では2021年1月27日に有罪が確定していますので、横領の意思があったかどうかに関わらず、データを改ざんしていたことは事実のようです。
これで終わりなら「社長が犯した犯罪」で話は終わりだったのですが、実はさらに事件を複雑にする要素があるのです。
2017年7月25日、ギリシャにおいてアレクサンダー・ビニックというロシア人が逮捕されました。この件については、ロイター通信が詳しく報じています。
米検察当局は26日、40億ドル以上のマネーロンダリング(資金洗浄)に関与したとして、ビットコイン取引所の運営者でロシア人の男を起訴したことを明らかにした。
起訴されたのはビットコイン取引所「BTC─e」の運営者とされるアレクサンダー・ビニック容疑者(38)で、ギリシャ北部の村で逮捕された。 米当局は、ビニック容疑者は東京のビットコイン取引所「マウントゴックス」の破綻にも関連したとみている。
ハッキングによりマウントゴックスから資金を「入手」し、BTC─eと自身がもつ別の取引所を通じて資金洗浄した疑い。
アレクサンダー・ビニック氏はロシアのビットコイン取引所である「BTC-e」の関係者(オーナーの一人という説あり)です。
6年で4,400億円相当のビットコインを用いてマネーロンダリング(資金洗浄)を行っていたと言われています。
このアレクサンダー・ビニック容疑者がマウントゴックス事件の真犯人であるというのが、現在最も有力な説と言われています。


原因と対策:マウントゴックス事件を教訓として
長くなりましたので、ここまでの経緯をまとめましょう。
2023年現在でも、真相が完全に解明されているわけではありませんが、マウントゴックス事件で起こったとされている事実(ファクト)は以下の2つです。
- マルク・カルプレス社長が自身の口座のビットコインを増やしていたこと。
- アレクサンダー・ビニック容疑者がマウントゴックス社のビットコインをハッキングで奪取したこと。
この原因は以下の2つです。
- 内部犯行が可能な、ずさんな管理体制
- ハッキングを許した、取引所のセキュリティ体制の弱さ
マウントゴックス事件は多大な被害を出した大事件でしたが、ビットコイン業界は事件を大きな教訓として対策をとりました。
大手取引所「コインチェック」元COO(現・執行役員)の大塚雄介氏は、自身の著書でこう述べています。
マウントゴックス事件と同じことが別の取引所でも起きる心配はないのでしょうか。結論から言うと、現状ではまずあり得ません。
(中略) 全体を100とすると、そのうちの数%しかオンライン上に置かず、それ以外はインターネットから物理的に切り離して、オフライン環境で厳重に保護してあります。
(中略) 誰か一人の権限で扱えるようになっていると、つい出来心で顧客の資産を流用する人が出てこないとも限らないので、ヒューマンエラーを排除するために、複数の人が承認しないと送れない仕組みも取り入れています。出典:いまさら聞けないビットコインとブロックチェーン
要は、以下の2つの施策をとったということですね。
- ビットコインの操作時の複数承認を必須にして管理体制を強化
- ほとんどのビットコインをオフライン管理にしてハッキングを防止
これは非常に効果的な対策であり、マウントゴックス事件後、マウントゴックス事件が起こった当時よりも格段に意識・管理体制が高まりました。
しかしながら、これで安心なのかというと、私にはそうは思えませんでした。
オンライン管理のビットコインは相変わらずハッキングで盗めますし、複数承認の件も、「CEO」「COO」「情報システムのトップ(CTOやCIO)」がグルになったら終わりです。
実際、この著書を出した方がCOOを務めていたコインチェックにおいて、2018年に「コインチェック事件(コインチェックにおけるネム流出事件)」が起きています。


マウントゴックス事件を受けて投資家個人がとるべき根本的対策とは
筆者は個人投資家として、FX(外国為替)、金地金、原油、国内株式、海外株式(米国・欧州・ロシア)、そして仮想通貨と実に様々なものをトレーディング・投資してきました。
海外の証券会社や仮想通貨取引所にも登録し、長年使ってきています。
この中で、忘れると常にひどい目に遭ってきた「投資家として絶対に忘れてはならない鉄則」をご紹介します。
鉄則:投資を行う際には、自分の身は最大限自分で守ること。
これを忘れた時に、投資家は手痛いしっぺ返しを食らいます。
「取引所が守ってくれる」はほとんどの場合には真実かもしれませんが、万が一真実でなかった時にダメージを受けるのは、あなたや私のような投資家です。
ですので、1つの取引所に何かあっても大丈夫なように、取引所は複数に分散してください。
「卵はひとつのカゴに盛るな」とは株式の格言ですが、株式では「分散せず、1番上がる株に集中したほうが儲かる」ので、集中にもメリットがあります。
しかし、仮想通貨の場合は違います。
例えば取引所Aに資産を集中してしまうと、取引所Aに何かあったら終わり。
しかも、取引所Aに仮想通貨(暗号資産)を集中させておくことで、あなたに大きなメリットがあるかというと、特にないはずです。
最低でも2つ、できれば3つの取引所への分散を行うべきだと思います。
大手取引所に厳選し、少なくとも2~3つくらいに分散する。これが、取引所により何度も痛い目に遭ってきた先人たちから学べる教訓だと言えるでしょう。
悪いことは言いません。いつ次の「マウントゴックス事件」が起こっても大丈夫なよう、資産は分散しておきましょう。

まとめ:仮想通貨では取引所の選別と分散が正義
私が以前使っていた仮想通貨取引所、Zaifは仮想通貨の流出事件を起こし、金融庁から何度も業務改善命令を受けていました。
その後、一度事実上の倒産をしています。(現在もZaifはありますが、別の会社が運営しています)
参考元「Zaif」運営のテックビューロ 暗号資産交換業を廃止へ
仮想通貨でのリスクは2つ。一つは、価格が暴落して大損すること。
このリスクは、当サイト「博士の仮想通貨積立」で常におすすめしている「積立投資(つみたて)」で軽減することが出来ます。
もう一つが、取引所のリスク。こちらのリスクについては、まったく予期していない人が多いです。
マウントゴックス、コインチェック、Zaifと、取引所のリスクは数年ごとに顕在化してきました。
仮想通貨への投資においては、取引所の選別と分散が正義です。
他の投資と同じく、チャートやマクロ経済状況から今後の価格を予測するのも大切ですが、取引所選びも同じくらい重要なのです。
注意
- 当サイト「博士の仮想通貨積立」の情報は、金融庁の暗号資産に関する情報・データや、仮想通貨の過去チャート(事実としての価格データ)、独自の見解を基に、情報の提供を目的として当サイトが作成したものです。特定の商品の勧誘や、売買の推奨等を目的としたものではありません。
- 当サイトのいかなる情報も、将来の運用成果を保証するものではありません。また、一般に仮想通貨(暗号資産)には元本割れのリスクがあります。最終的な投資決定は読者様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。